靴底と床面の通電を用いた位置検出システム

コンテキストアウェアサービスにおいて,ユーザの位置情報は重要である.例えば,工場内において,場所ごとの作業工程をユーザに知らせることができたり,間違った場所に行った際に警告を出すことができる.また美術館においては,どの展示を見ているのかがわかり,その作品の説明音声を流すことが可能である.店舗では,歩行経路や滞在時間などの顧客データが有益な情報となる.
位置情報は様々な場所,様々な用途に対して重要となるが,実世界でのサービスを考える際には,ユーザ側にも設置環境側にも低負荷なシステムが望まれる.そこで本研究では,ユーザと環境のどちらに対しても低負荷でユーザの位置を検出可能な手法を提案する.
提案システムは,電極,比較的大きな抵抗値をもった導電性素材およびマイコンから構成される.床面に導電性素材を配置し靴底に電極を装着することにより,床を踏みつけた際に電極間を導電性素材が埋めて通電するので,その時の電圧値をマイコンで測定し,導電性素材の抵抗値も算出できる.抵抗値の異なる導電性素材を複数種類用意することで,算出された抵抗値によって現在ユーザがどの導電性素材の上にいるのかが検出できる.さらに,グラフ彩色の考えを取り入れることにより,複数種類の素材を特定のパターンで配置して,ユーザの歩行経路を取得することも可能である.
本提案システムは,環境側には導電性素材を配置するだけであり,ユーザ側にも人体の影響の無い程度の電圧のかかった電極を靴底に装着するだけで構築可能である.その他の利点として,フレキシブルに検出エリアを設定可能,干渉がなく明確にエリアの分割が可能,ユーザの人数が無制限などがあげられる.

磯山直也, 寺田 努, 塚本昌彦: 靴底と床面の通電を用いた位置検出システムの提案, ユビキタス・ウェアラブルワークショップ2013 論文集, p. 14 (Dec. 2013).