手元の物体を用いるバーチャル物体生成

バーチャルリアリティにおいて,ユーザが表示されたバーチャル物体とインタラクションする際には,触覚を付与することで,バーチャル物体への現実感を向上させられる.触覚を付与する手法として,バーチャル物体に似た形状を持つ実物体を身の回りから選び,バーチャル物体の代替として用いる方法が考えらえれる.しかし,バーチャル物体と全く同等の物体が存在しない場合,2つの物体が持つ形状の差異に対してユーザは違和感を抱くと考えられる.そこで,本研究では実物体とバーチャル物体の形状を併せたキメラ物体を新たに提案し,違和感の緩和を目指す.キメラ物体は,実物体とバーチャル物体の空間座標を使用して,バーチャル物体の触覚が重要と思われる部分を実物体に近く,それ以外の部分をバーチャル物体として座標変換して作成する.変形させた物体をバーチャル空間中に表示し,実空間の物体と同期させることによって,実空間中の物体の触覚と,バーチャル物体から得られる視覚情報が一致し,バーチャルリアリティにおける没入感が向上すると考えられる.さらに,キメラ物体を作成する処理を理解していないユーザを対象に,キメラ物体を作成の支援が可能なインタフェースを構築した.実験の結果,バーチャル物体の代わりに提案したキメラ物体を使用することで違和感が緩和されることを示唆された.さらにキメラ物体作成支援システムを通してユーザがキメラ物体を簡易に作成できる可能性を示した.

福本直耶, 磯山直也, 内山英昭, 酒田信親, 清川 清: 自然な触覚再現のための実物体を利用したバーチャル物体の変形手法, メディアエクスペリエンス・バーチャル環境基礎研究会, Vol. 121, No. 179, MVE2021-16, pp. 44–49 (Sep. 2021).